「歩留まり」をあまりに厳しく読み過ぎると,入学を希望してくれる学生の定員割れをムザムザ引き起こしてしまい,それは大学当局としては経営上もできるだけ避けたいと考えるのが,一般的だろう。かと言って,各私学の各学部には収容定員があり,収容定員8000人未満の大学で,たとえばその定員(4学年分)の1.3倍を超えた入学者を4年間で出してしまうと,文科省(日本私立学校振興・共済事業団)からの補助金がカットされてしまうこともある。
また,より実務的な問題としては,新入生向け語学クラスやゼミなどの少人数クラスの編成,それにともなう教室の確保などに苦労する(これは主に職員サイドの問題であるが,語学や新入生用のゼミを教える教員の負担増にも最終的にはつながる)。
なので,経営面からも私学ではキチンとした入学「歩留まり」率を読んだ上で,合格人数を決めなくてはならなくなるようだ。各種入試(付属校,協定校,提携校,姉妹校などを対象とする入試,AO入試と指定校推薦入試など)はすでに終わり,一般入試が行われる頃には,入学者もある程度決まっているので,それに比べて,一般入試の倍率をどうしたらよいのか,偏差値はどうなりそうなのかなどを勘案しつつ,「歩留まり」面でもベストな人数を入試関連委員長は(場合によっては職員サイドと一緒になって)出していかねばならないだろう。
櫻田大造 (2013). 大学入試 担当教員のぶっちゃけ話 中央公論新社 pp.132-133
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