読者諸氏の中には,「それでも,入学金は払わず,入学手続書類だけを送ることで入学申込をすればいいやんけ!」と思う方もおられるかもしれない。実は入学手続書類のみを返送する入学者確定方式になったら,新たに発生してしまう問題もあるのだ。書類だけでの入学予定者とするようなシステムを取った場合,きわめて簡単に入学予定者になることができるので,多くの受験生や保護者は,ふたつ以上の私学に入学希望を出すようになってしまうことが懸念される。
もし入学金を納めなくてもよくて,たとえば早稲田の政経学部と慶應の経済学部に書類提出するだけで,入学予定者になり,東大の文II合格発表を待つことができたとしよう。この場合,第一志望は東大であるが,落ちた場合,早稲田にするのか,慶應にするのかは,いろいろなデータをもとにして家族会議やら受験生本人のこのみで決めることになろう。そうなると早稲田としても慶應としても,一体何人くらいが実際入学してくれるのか,入学式当日まで皆目検討もつかなくなってしまい,かなりの混乱が生じてしまう。
櫻田大造 (2013). 大学入試 担当教員のぶっちゃけ話 中央公論新社 pp.143-144
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