悪いことに,執筆をめぐる基準は,かつてなく高いものとなっている。心理学者が投稿する論文数や雑誌数はうなぎ上りだし,減る一方の研究助成金をめざす研究者の数も増えるばかりだ。学部長や学科長からも,論文数を期待される。古き良き時代の陽気な大学運営人は,教員が研究助成金を申請すると喜んでくれたものだが,今どきの陰気な経営陣は,新しい教員は研究助成金を申請して当然だと思っている。学科によっては,教員が研究助成金を受け取ることを,テニュアのポジションを得たり,昇進したりする際の条件にしている所さえある。研究志向の大学では,論文数の少ないことが,テニュアになれなかったり昇進できなかったりする理由になっているし,小規模教育志向の大学でさえ,学術論文執筆圧力が高まっている。心理学のキャリアをアカデミズムの現場で開始するには難しい時代になっているということだ。
ポール・J・シルヴィア 髙橋さきの(訳) (2015). できる研究者の論文生産術:どうすれば「たくさん」書けるのか 講談社 pp.4
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