論文や本をたくさん書いても,いい人になれるわけでも,優れた心理学者や科学者になれるわけでもない。心理学者には,文章をひたすら量産する人もいるが,人によっては,同じ発想をひたすら使い回す人もいて,実験や観察にもとづく論文を何本か書き,次に,レビュー論文を書き,さらにそのレビュー論文を温め直して書籍の一部に利用し,それをもとに,今度は教科書の一部やニュースレターの記事を書くというような具合だったりする。多産な研究者は文章の数は多い。でもだからといって,他の研究者より発想が豊かだったり優れていたりするとは限らない。執筆は競争ではない。論文数を1つ増やすというだけのために論文を書かないこと。自分の論文や著作の数を数えないこと。投稿をとりやめたために,フィルムキャビネットに眠ることになった原稿,つまり,別の雑誌になら出せるけれど,どの雑誌でもよいというわけではない原稿にも誇りを持つこと。自分が業績数ばかり気にしていることに気づいたら,執筆時間を使って,動機や目標について考えてみた方が良い。
ポール・J・シルヴィア 髙橋さきの(訳) (2015). できる研究者の論文生産術:どうすれば「たくさん」書けるのか 講談社 pp.156-157
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