そもそも,動物の知能測定はやっかいだ。しかも,外見だけに頼ると,簡単にだまされる恐れがある。タコは全身頭のように見えるが,腕から上のふくらんだ部分はほとんどが胴体だ。メインの脳を包み込むように食道があり,さらにややこしいことに,脳の大半は腕にある。ともかく,脳の大きさが知能を表わしていると考えるのは問題がありそうだ。脊椎動物では,脳のサイズは体が大きくなるのに比例して増大するように見えるので,体重に占める脳の重量の割合に基づいて脳化指数(EQ)という指標が考案された。想定される知能を簡略に表わす方法だ。人間はいちばん高くて,約7.4になる。イルカは5.3あたりでほとんど動かず,猫は1.0,ネズミは0.4だ。そこから,脳が体重に比べて小さくなるにつれて,指数はどんどん下がってゼロに近づく。EQで査定すると,タコはあまり上位に来ない。マダコが何とか0.026ぐらいのEQでとどまっている。ミズダコは腕を広げた長さが4メートル以上になることもあるのに,大脳はクルミ1個か2個分の大きさしかない。ずいぶん小さいと思うかもしれないが,アンダーソンの指摘どおり,脳の大きさは地上最大の生物と言われた恐竜と大差ない。
キャサリン・ハーモン・カレッジ 高瀬素子(訳) (2014). タコの才能:いちばん賢い無脊椎動物 太田出版 pp.140-141
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