実は,スルメイカに限らず,ほかの多くのイカも寿命は1年程度であり,ゆえに単年性と呼ばれる。熱帯海域に暮らすミミイカといった小型のイカなどでは,寿命は半年,あるいはもっと短いという説もある。タコもおおかたにおいて1年程度の寿命だ。寿命の見積りに多少の幅はあり,1年半とか,種類によっては2年程度というものもあるが,何年間も生き続けるというイカやタコはいない。こういう話をすると,「マッコウクジラとの格闘シーンがよく描かれる,体の大きさが10メートルを超えるあのダイオウイカもたった1年しか生きないのか?」と必ず聞かれるが,この点ははっきりしない。さすがに彼らはもう少し長く生きているのかもしれないが,体の大きさからしてもダイオウイカはひとまず例外といえるだろう。
スルメイカは生まれたときには体のサイズ(外套膜という,ぼくらの胴に相当する部位の長さで測る)がわずかに1ミリメートルほどであるが,それがたった1年(実際にはもっと短い期間)で30センチメートルになるわけだ。イカは非常に成長の速い動物ということができる。
池田 譲 (2011). イカの心を探る:知の世界に生きる海の霊長類 NHK出版 pp.32-33
PR