その答えはこうだ。宗教(その定義がむずかしいのはよく知られている)は,カウンターナレッジに走りがちな一面はあるものの,単なるデマではない。あなたが聖霊の存在を信じているとしても,それが間違いだとはだれにも証明できない。つまり,デマではない。あなたが聖霊にがんを治してもらったと主張したとしたら,それも実証できないことだ。神が自然の,あるいは医療的な方法によってあなたを治癒したことはないと立証することはできないからだ。しかし,あなたが聖霊から授けられた力で医療に頼らず他人のがんを治せると主張すれば,それは検証して間違いだと証明できる。だからといって,あなたを嘘つきと称するのは当たらない。危険な形でデマを広めただけだ。
宗教がある種のカウンターナレッジになるのは,私たちの知性による判断を狂わせようとする場合か,その判断と矛盾する場合に限られる。宗教にまつわる歴史的な奇跡が実際に起こったと信じるに足る理由はない。だが,教会に通っている普通のクリスチャンのように,キリストの復活といった超自然的なできごとを信じることと,信仰療法のように,周りの世界へ間違った情報を流すことが明らかに違うのは,常識で考えればわかるはずだ。
ダミアン・トンプソン 矢沢聖子(訳) (2008). すすんでダマされる人たち:ネットに潜むカウンターナレッジの危険な罠 日経BP社 pp.36-37
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