創造論はどんな形であれ,計り知れない被害を及ぼす。これほど多くの科学的な発見をむしばむ疑似科学はほかにないだろう。進化論を無視するかぎり,天文学,人類学,生物学,地質学,古生物学,物理学,動物学を正しく理解することはできない。そして,こうした無知がもたらす社会的,政治的,文化的な損失もまた計り知れないほど大きい。こうした分野の専門家を育成しない社会が,競争力のある経済国に発展できるわけがない。「ダーウィニズム」を拒絶することで,開発途上の世界は西欧の堕落した価値観に対してモラル的な優位を示しているつもりなのだろうが,そういう問題ではないのだ。科学的な方法そのものを拒絶してしまっているわけであり,そうすることで未来の世代に物質的な貧困だけでなく知的な貧困をも運命づけてしまっているのである。
ダミアン・トンプソン 矢沢聖子(訳) (2008). すすんでダマされる人たち:ネットに潜むカウンターナレッジの危険な罠 日経BP社 pp.70
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