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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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刑務所収容の副作用

大量の犯罪者を刑務所に収容することには——たとえ暴力犯罪の減少に役立ったとしても——それ自体が引き起こす問題がある。最も暴力的な人たちが収監されてしまえば,さらに多くの犯罪者を刑務所に入れることは急速に収穫逓減のポイントに到達する。あとから収監される犯罪者の危険度はしだいに低くなり,そういう人たちが刑務所に入っても,犯罪率はさほど大きく低減しなくなるからだ。また人間は通常,年を取るにつれて暴力性が低くなるので,ある時点を越えて犯罪者を収監しつづけることは,犯罪率の減少にはほとんど寄与しない。これらの理由から,収監率には最適な数値というものがある。だがアメリカの刑事司法制度がそれを見つけ出す可能性は低い。なぜなら選挙政治によって,厳罰化の流れは将来にわたってずっと続くからだ。判事が指名ではなく選挙で選ばれる地区ではなおさらである。候補者が刑務所送りになる人を減らし,刑期を減らすことを主張しようものなら,たちまち対立陣営から「犯罪に甘い」候補者というネガティブキャンペーンをテレビで流され,当選できない。その結果,合衆国の刑務所には本来収容すべき数をはるかに超えた人数が収監され,アフリカ系アメリカ人社会には,多数の男性が奪われるという過度の損害がもたらされている。

スティーブン・ピンカー 幾島幸子・塩原通緒(訳) (2015). 暴力の人類史 上巻 青土社 pp.234
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