『セサミストリート』の最初期の傑作(1969〜1974年)を収めたDVDボックスが発売されたときには,箱のなかに注意書きが入れられていて,この番組は子どもが視聴するにはふさわしくないと書かれていた!なぜなら番組のなかでは子どもたちがジャングルジムによじのぼったり,ヘルメットなしで三輪車に乗ったり,土管の中をくねくねと這い進んだり,新設な他人からミルクとクッキーを受け取ったりと,さまざまな危険行為を冒しているからだ。番組中の寸劇コーナー「モンスターピース・シアター」などは,徹底的な検閲を受けた。各エピソードの終わりに,英国風のスモーキングジャケットを着てアスコットタイを締めた司会のアリスター・クッキー(クッキーモンスターが演じる)が手に持ったパイプをがつがつと食い尽くしていたのだが,それが喫煙を美化している,窒息の危険性を描いていると見なされたのである。
スティーブン・ピンカー 幾島幸子・塩原通緒(訳) (2015). 暴力の人類史 下巻 青土社 pp.125-126
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