忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

自己奉仕バイアス

自己奉仕バイアスは,私たちが社会的動物であるために支払う進化的代価の一部だ。人間が集まって群れをつくるのは,磁力によって互いに引き寄せられるロボットだからではなく,それぞれの内に社会的な感情や道徳的な感情をもっているからだ。人間は温情や同情や,感謝や信頼や,孤独や罪悪感や,嫉妬や怒りを感じる。それらの感情は,人が社会生活——相互交換と協調活動——において損失を負うことなく,確実に利益を得られるようにしてくれる内面の調節器だ。この場合の損失とはすなわち,嘘つきや社会の寄生者に一方的に利用されるということである。私たちは自分に協力してくれるだろうと思える人に共感を覚え,信頼し,感謝して,お返しに自分もその人に協力する。そして自分をだますのではないかと思われる人に対しては,怒りを感じて仲間外れにし,協力を差し控えたり罰を与えたりする。ある人がどれだけよい人であるかは,協力者としての評判を育むことで得られる尊敬と,こっそり他人をだますことで不正に得る利益とが,秤にかけられた結果である。社会集団は,いわば親切さと信頼のレベルがさまざまに異なる協力者たちで成り立っている市場で,各人は自分が損をしない範囲において最大限に親切で,信頼性の高い協力者であることを宣伝する。その損をしない範囲というのはだいたいにおいて,実際よりも少しだけ親切で,少しだけ信頼性が高いというレベルになるのかもしれない。

スティーブン・ピンカー 幾島幸子・塩原通緒(訳) (2015). 暴力の人類史 下巻 青土社 pp.210
PR

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]