初期のSATを受けてみると,数学的計算を含む問題や,同じ形あるいは顔の表情を問う問題に多少出くわすとはいえ,大半は,単語への精通という知能テストの永久不変の主成分が占めているのがわかる。つまりSATは長い年月の間に,ほとんど変化していない。初期の版の問題には全寮制学校で教える英文学風の装いがあり,現在それはなくなってしまったが,基本的な構成は,SATの受験経験を持つ多くの米国人に馴染み深いものだろう。初期版から2,3問抜き出してみると,SATが独特の方法で単純化し,同時に誤解を招くようにしていることと,受験者の熱心な受験対策に歯止めがきかない傾向にあることが伝わってくる。
これらの4語の中から反意語を挙げなさい。
obdurate spurious ductile recondite
最初の単語と同じ意味の単語はどれか,あるいはいずれも同じ意味を持つか,いずれも同じ意味を持たないか,答えなさい。
impregnable terile vacuous nominal exorbitant didactic
次の文章の中から誤った単語を見つけ出し,正しい単語に変えなさい。
In the citron wing of the butterfly, with its dainty spots of orange, he sees beyond him the stately halls of fair gold, with their slender saffron pillars, and is taught how the delicate drawing high upon the walls shall be traced in tender tones of orpiment, and repeated by the base in notes of graver hue.
こんなテストはまったく聞いたことがなく,突然受けさせられたという人なら,このような問題を3時間かけて解けば,知能の大きさを明らかにでき,正答と誤答の数が,受験者の,社会で占めるべき位置を決めるのに活用できるという提案を信じられないかもしれない。しかしテスト作成者の目には,SATや同種のテストは偉大な発明のオーラをまとっているように見えた。
ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.41-42
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