トーマス・ジェファーソンが1813年に「自然のアリストクラシー」という言葉を用いたのは,「アリストクラシー」という単語がそれまでのあいだに,全面的にではないが,少し変化した証拠だ。コナントが好んで引用したもう1人の提唱者,ラルフ・ウォルドー・エマソンは1848年,「アリストクラシー」という題名のエッセイを執筆し,この単語は,相続で受け継がれた特権を意味するのでなければ,ジェファソンが示したような安心感があると述べた。「上流階級の存在は,優秀さに依存するかぎり有害ではない」実際,エマソンの理想社会は,人選に良い方法があればの条件付きで,プラトンが提唱した正統派の貴族政治であった。エマソンは冗談めかして,だれの優秀さでも測れる「人間測定器」があれば良いのにと表現した。「各人が評価を受け,各人が各成人市民の真の数値や重みを承知し,各人はいるべきところに位置し,実行・使用する強大な権力が各人に委託されるところを見てみたい」
ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.57
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