米国では,機会は国民の特別な関心事だった。人々は従来,非公式な組織だっていない形で,学校や大学の外で機会を手にしていた。大学は,実業界の出世に関心のない特権的な連中や,評価は高いが収入は高くない職業——法曹,医師,聖職,外交官,軍人——のために教育を授ける場所と受け止められていた。逆に実社会で成功するには,教育関係の証明書は必要ないと思われていた。トクヴィルは「米国では,おびただしい群衆がもとの社会状況から抜けだそうと大変な努力をしている場面に最初に出会う」,「すべてのアメリカ人は上昇願望で頭がいっぱい」と書いた。願望実現の方法は?きめ細かな正規の教育でないのは確かだ。「勉強の味が分かりそうな年齢に達するころには時間がない。時間が取れるころには勉強の味を忘れている」と彼は言う。
ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.63-64
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