米国の小説や物語に出てくる独力で成功した男も,わずかな教育しか受けず,学校は成功への明らかな障害になると思っているケースが多かった。ホレイショ・アルジャー作の人気小説も,貧乏だが野心を持った少年という同じテーマだった。熱血漢の若い主人公と独力で成功した実力者の熟年男性が偶然出会い,よくある形で話が展開する。セオドア・ドライサーの『資本家』では,将来資本家になるフランク・カウパーウッドが,「子供でいたくない。働きたい」という理由で,13歳のとき学校に行かなくなった。若きジェイ・ギャツビーは,フランクリンが自伝で勧めたような自分磨きのチェックリストを持ち歩いていたが,著者のフィッツジェラルドは,ギャツビーがそれとわかる教育を受けたかどうかは語っていない。
ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.64-65
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