圧倒的かつ急速に伸びているETSのテストは,TOEFLと呼ばれる,多くの学術系大学院が留学希望者に受験を義務づけているテストだった。TOEFLは世界中で実施されていたが,市場のかなりの部分がアジア。TOEFLはエリス島の現代版のような機能を果たしていた。米国にたどり着きたい人たちは,この狭いポイントを通過しなければならない。このため,TOEFLは最も不正の多いテストだった。替え玉受験が横行し,ETSはTOEFLのスコアレポートに受験者の写真を印刷しなければならなかった。時差を使った不正は,TOEFL実施側に刺さったもう1つの棘だった。問題が台湾のテストセンターからひそかに持ちだされ,ロサンゼルスにファクシミリで送られる。ロサンゼルスでは,だれかが夜明けまでに正解を作成し,その日の受験者に売りつけることができた。ある者は,受験者がテスト本番で使う鉛筆に,正解を印字する方法を編み出した。またある者は施行者の追跡を受け,露見して家族に恥をかかせるかもしれないと思い,自殺した。
ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.297-298
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