社会のトップの人たちは大体いつも,本質的に他人より優秀だと感じており,幸運に生まれついただけでなく,自ら地位を築いたと思っている。戦間期の米国やビクトリア王朝の英国など,われわれから見て,明らかにメリトクラシー的でなく,アリストクラシー的だったと思われる社会では,責任を担う価値のある人間が社会を運営するとされた。過去に繁栄を謳歌した人たちはどのようにして自分を優秀だと認めたのだろうか。そういう人たちは通常,限られた枠内で競争するメリトクラシーに参加していた。たとえば『イェールのストーバー』が描いた類の競争である。少数の非常に限られたグループのメンバーが,最高の賞を目指して全力で競争する。勝者は,自分は賞にふさわしいと感じる。競争にいっさい参加できない大衆は,遠く離れて視界に入らない。
ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.422-423
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