米国版メリトクラシーは,いくつもの仮定が連なった上に成立していた。人々は今,この仮定をよく知らない。最初に公表されなかったからだ。第1の仮定は,このシステムの主要課題が,少数の人間の選抜と新エリート層の形成に置かれるところにあった。すべての米国民に機会を与える目標は,システムの設計に絶対必要な要素ではなく,システムに世間の支持を集める方法として,あとで付け足された。2つ目の仮定は,選抜方法は知能テストに依るべきで,それが優れた学問的才能の代用物を測るとするものだ。言い換えれば,「能力」の定義は,純粋に知能,教育面の能力となる。最後に,学生を選抜する目的は,トーマス・ジェファーソンが「政府機関」と呼んだもの——近代官僚国家の行政・学問サービス——の現代版に学生を入れるためだった。システムの創設者たちは,現在使われている意味のメリトクラシーより,フランスや日本のエリート官僚システムに近いものを構想していた。
ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.423
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