真のメリトクラシーの米国とは,どんなふうだろうか。全員に平等に機会を与え,最高の成果を残せる人間に職が与えられる社会だろうが,その目標達成には再編が伴い,現在の米国版メリトクラシーとかなり違って見えるだろう。重要な職務,金と地位によ最高の報酬は,ほんの短期間だけ,厳格に実績に基づいて与えられる。若いころの将来性に基づいて生涯にわたる在職権を与えるのは,できるだけ減らされる。エリート層はメンバーがたえず入れ替わる集団になり,安定した不動のメンバーではなくなる。成功した人間でも落ち着いてキャリアを積み重ねられなくなるが,人生がうまく行かない人間からは,共感を得やすいだろう。マンダリン集団の中のスペースはぎりぎりまで小さく,マンダリン外のスペースはぎりぎりまで大きくなろう。
ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.427
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