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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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「どんどん国民がバカになる」という論法(日本でもどこかで目にしがち)

 過去20年の間,信頼すべき心理学者たちが,「多くの西欧諸国と同様に,英国国民の平均知能が低下しつつある」といって,警告とうれいのつぶやきや叫び声を出すのが聞かれてきた。この主張は,驚くほど単純な一連の推論にもとづいている。第1は,知能は主として遺伝によって受け継がれたものであるという論である。第2は,知能の高い人たちは知能の低い人たちより,子どもが少ない傾向があるという,すでに知られている事実である。もしもこの傾向が長い期間にわたって続くならば,高い知能を作るように遺伝的に決定する遺伝子は,国民の血の中から減ってゆき,したがって知能の一般的低下はさけられないであろう。この低下がすでにはじまっているということを示すために,最近,精神欠陥者の数が増加しているといった証拠が示される。こうした議論は,軽く片づけることができない。それというのも,これらの議論が,多数の実験的研究によってささえられているからなのである。もしもこうした議論が真実であるならば,大変な問題であって,このことにくらべればドルの低下とか,インフレーションの恐怖とかは,最終的に重要な問題ではないとして,肩をすくめてあしらえばいいぐらいのちょっとした不都合なのである。

(引用者注:このあとで,第1と第2の点の根拠が示される。しかし,それらが正しいとしても,知能の一般的低下は生じていない。むしろ,フリン効果として知られるように,知能検査の平均値は時代を経るに従って上昇する傾向にある。したがってこれは,三段論法が成り立たない例と考えるのが適切なのかもしれない)

H・J・アイゼンク 帆足喜与子・角尾 稔・岡本栄一・石原静子(訳) (1962). 心理学の効用と限界 誠信書房 p.90
(Eysenck, H. J. (1953). Usen and Abuses of Psychology. London: Penguin Books.)
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