そのうちの1つがエピジェネティックスです。エピという語はエピソード(挿話)という言葉にもあるように,「上」とか「外」という意味です。ジェネティックスは遺伝学です。遺伝学の中心はDNAです。そこでエピジェネティックスとはDNAの上または外に生じた変化,つまりDNAの修飾のことを言います。生体内のDNAの特定の部分(CpGアイランドとも呼ばれる,シトシンとグアニンに富む領域)が加齢や食事,化学物質等の外部環境の影響によってメチル化すると,その遺伝子は活性を低下させて少量のタンパク質しか作らなくなりますし,あるいはDNAと結合しているヒストンがアセチル化すると,アセチル化された遺伝子は逆にタンパク質が多く作られるようになります。このように環境の変化で特定の遺伝子が修飾を受け,作られるタンパク質が増減して,そのタンパク質の作用が弱くなったり強化されたりする現象をエピジェネティックスと呼んでいます。そうするとヒトの特定の性格が強調されたり,目立たなくなったりすることもおこることになります。
土屋廣幸 (2015). 性格はどのようにして決まるのか:遺伝子,環境,エピジェネティックス 新曜社 pp.9-10
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