第1節で述べたように,80〜90%は遺伝によって決まるとされる身長でさえも,遺伝子の関与の割合は少ないか,あるいはあまりに多数の遺伝子を想定しなくてはなりません。マーはこの状態を2008年に「失われた遺伝性」と呼び,以後,この言葉は広く用いられるようになりました。
プローミンは失われた遺伝性を解決する方法を整理しました。1つは前述した不安やおそれの感情における候補遺伝子からのアプローチ。2番目はゲノム全体を見渡した全ゲノムシーケンスやDNAマイクロアレイや全ゲノム関連解析。いずれも特定の性状や疾患などについて,特定されていない遺伝子やスニップを広範に把握する方法です。3番目にエピスタシス(ある遺伝子の発現が別の遺伝子によって調節されたり影響を受けること。遺伝子ー遺伝子相互作用とも言われます)と遺伝子ー環境相互作用,そしてエピジェネティックスです。
土屋廣幸 (2015). 性格はどのようにして決まるのか:遺伝子,環境,エピジェネティックス 新曜社 pp.103
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