1960年代,アメリカの学校では,子どもたちはしばしばIQの高い順に並べられ,そのことは,IQの高い子にも低い子にも,長期的な悪影響を及ぼした。今,時代は,遺伝子検査と遺伝子決定論の方向に進もうとしている。わたしたちは再び知能検査の過ちを犯すつもりなのだろうか。どんな遺伝子を持っているかによって,わたしたちの心は硬くもなれば,過度に楽観的にもなるが,遺伝子ですべてが決まるわけではないのだ。
たとえば,テストの点が悪かった時に,「次はきっとうまくいくよ」と力強く励まされたほうが,「ベストを尽くしなさい。でも仕方ないよ,遺伝的にはたぶん能力の限界なのだから」と言われるより,次はよい点がとえるはずだ。将来,遺伝子構造によって人の行動をある程度予測できるようになったとしても,遺伝情報から才能があると決めつけるのは,逆の効果をもたらすだろう。
ティム・スペクター 野中香方子(訳) (2014). 双子の遺伝子:「エピジェネティクス」が2人の運命を分ける ダイヤモンド社 pp.68
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