宗教は信者たちに,より多くの子どもをもつことを奨励する。1984年から2004年までの世界価値観調査の対象となった82カ国において,毎週宗教儀式に出席する女性は,平均で2.5人の子を持ち,そうでない女性の子どもの数はわずか1.67人だった。より厳しい正統派の宗教では,さらに驚くべき数字が出た。オールド・オーダー・アーミッシュの夫婦は,平均で6.2人の子をもうけ,他の厳格な宗教でも,出生率は平均的な女性の3倍にのぼった。しかし,きわめて厳格な宗教のコミュニティで育った人も,そこを離れて世俗に移ろうとする人もいる。
最近,アメリカで,将来の宗教遺伝子(信仰深い遺伝子)率——厳格な宗教集団の各世代の出生率と,宗教から離れる人の割合から算出する——を予測する研究がなされ,驚くべき結果が出た。小規模な宗教集団の遺伝子は,今後も生き残るだけでなく,増加して,人口に占める割合を高めていくのだ。たとえばアーミッシュや正統派ユダヤ教徒は,現在,アメリカ全人口の0.5パーセントを占めるにすぎないが,出生率が通常の3倍にもなるため(ひとりの女性が平均で6人の子どもを生む),ひと世代ごとに5パーセントの信者が減ったとしても,10世代後にはアメリカの総人口の20パーセントを占めるようになる。たとえその集団の50パーセントが,宗教から離れて世俗の世界に入ったとしても,20世代後にはアメリカの多数派になるのだ。
ティム・スペクター 野中香方子(訳) (2014). 双子の遺伝子:「エピジェネティクス」が2人の運命を分ける ダイヤモンド社 pp.118
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