環境(外的要因)には2通りあり,ある人の固有の,ランダムな要因(たとえばスリに襲われたり,事故に遭うといった経験も含まれる)と,家族や兄弟に共通する要因(たとえば住宅環境など)に分けられる。行動遺伝学者は,家庭環境(育児の仕方も含む)がどの程度,子どもの性格に影響するかという謎を追ってきた。その謎を解き明かす目的で彼らが行った双子と養子に関する研究は,2000年の時点で43件を超えていた。これらの研究の多くは規模が小さく,粗いものであったが,すべてを統合してメタ分析(複数の研究結果を統合し,分析・比較する方法)したところ,はっきりとしたパターンが見えてきた。
エリック・タークハイマーが,43の研究のデータを全て統合したところ,親の影響による行動の違いはわずか2パーセントで,兄弟姉妹の影響で生じる違いと同程度だった。誕生の順番と年齢の影響はわずか1パーセントで,さらに重要性が低かった。この結果は,生まれた順番が性格に大きく影響するという心理学者の信念に,真っ向から対立するものだった。そして通常通り,50パーセントは遺伝要因によるもので,残りがその人に固有かランダムな要因によるものとされた。
ティム・スペクター 野中香方子(訳) (2014). 双子の遺伝子:「エピジェネティクス」が2人の運命を分ける ダイヤモンド社 pp.137
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