ビネーの創案したこの年齢尺度は,当時の心理学者が思いもつかなかったような新しい考えであった。
従来のテストでは,100点満点であらわされるような点数法が,もっぱら採用されてきた。つまり,何問中,何問合格したかという数量が,尊ばれた。それに対して,ビネーは,どれほど困難な問題まで合格できるかというその最高限度を測定しようとする。ビネーによれば,知能は,長さのように量として測定できるものでもなく,したがって次第に積み重ねられていくものでもない。だから,知能をあらわす尺度も,体重計が示す目盛りのように数学的な連続量としてみなすべきではなく,質的に異なるものを分類し,これを梯子段のように階層順に並べたシステムとしてあつかわなければならない。この分類基準としてとりあげたのが,年齢という単位であった。この年齢を目盛りとする尺度は,3歳は2歳より,14歳は13歳より進んでいるという意味で順序づけはできるが,それ以上の量的関係はない。だからこれは,順序尺度とよばれている。
滝沢武久 (1971). 知能指数 中央公論社 pp.53
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