では,それほど発達的意味と縁を切りたいのなら,なぜ,知能をあらわすのに,年齢尺度の代わりに,点数方式をとらなかったのか?そうすれば,距離尺度からさらに進んで,「100点の知能は,50点の知能の2倍である」といえるような,加減乗除の可能な尺度(絶対尺度)をつくることすらできはしないか?実際,そうした知能の絶対尺度をつくろうとする試みが,なされなかったわけではない。たとえば,アメリカのヤーキズは,すでに1914年にその努力をはじめている。
ヤーキズのテストの大部分は,ビネー・テストから借り受けた。しかし,たとえば,ビネー・テストでは,「3分間に60語以上をいう」問題が,12歳用につくられているが,他の年齢用の問題の中には,この種の問題は見当たらない。そこで,ヤーキズは,「30語以上40語まで」いえば1点,「41語以上59語まで」いえば2点,「60語以上74語まで」おえば3点,「75語以上」いえば4点をあたえるようにした。こうして,それぞれの子どもの得点を合計して,知能を測ろうとしたのだった。
実際,各年齢ごとの平均値を算出して,グラフにあらわすと,身長の発達曲線に似た曲線がえられた。ヤーキズは,これを知能の発達曲線だとみなしている。
滝沢武久 (1971). 知能指数 中央公論社 pp.113
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