議論のルールをサッカーのルールとのアナロジー(対比)で話す場合に誤解しないように気をつけたいのは,議論は白黒が明確につく試合ではないということです。ある議論が有効(ゴールに相当)であることを議論の参加者全員が承認する場合でも,それは必ずしも「議論の勝ち負け」を意味しません。
むしろここで私が重要だと思うのは,議論の評価をする必要がある場合に,その議論をある「基準」または「ルール」に照らして評価できるということです。基準があるからこそ,他者の議論だけでなく,自分の議論に対しても評価できるのです。「あなたの考え方は誤っている」とか「あなたの論証には問題がある」と誰かに指摘された場合でも,それに対してむやみやたらに反発するのではなく,その指摘の正当性を「ある基準またはルール」に照らし合わせることで承認できるようになるというわけです。
福澤一吉 (2002). 議論のレッスン NHK出版 pp.63-64
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