実際,人は,他人から見た自分の印象をいちばん知りたいと思っている。メアリー・ステッフェルと私が行ったある調査では,インターネット上で500人のアメリカ人に対し,他人の頭のなかを覗ける<ブレインスコープ>が発明されたときのことを想像してもらった。それを使えば,相手の考えや気持ちが完璧にわかるという代物だ。そして,その道具をだれに対して,何を知るために使いたいかと訊ねた。すると驚いたことに,金持ちや有名人や権力者の考えに興味を持つ人はほとんどおらず,ほとんどの人は,パートナーや恋人,上司や家族や近所の人など,自分に最も近い人の頭のなかを知りたがった。つまり,自分が一番よく知っていると思っている人の頭のなかを覗きたいわけだ。しかも,被験者がもっとも知りたがったのは,相手が自分をどう思っているのか,ということだった。ほとんどの人が,<ブレインスコープ>を魔法の鏡のように使いたいと考えたのである。
ニコラス・エプリー 波多野理彩子(訳) (2015). 人の心は読めるか? 早川書房 pp.26-27
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