イスラムの思想には,アメリカ人を殺害しろとか,ユダヤ人を抹殺しろとか,そんな教えはありません。キリスト教徒やユダヤ教徒を殲滅しろという考えもありません。しかし「テロリスト」や「過激派」を掃討すると称して,爆撃機やドローン(無人攻撃機)による度重なる誤爆で子や母を殺すような残虐なことをした場合には,命を賭けて戦う戦士を生み出してしまいます。
そういう者が出てきたとき,それを「ジハードだ」と認識するムスリムはかなりいるはずです。西欧的な価値観に絶対的な信を置く人にはこうした反応は理解しがたいかもしれませんし,ムスリムの理路に同調すべきだとも思いません。ただし,最低限,ムスリムはそういうときに激しい反発をするということを知っておくことは,政治のレベルでも個人のレベルでも無駄な争いを避け,共存を実現していくうえで大変大事なことなのです。
内藤正典 (2015). イスラム戦争:中東崩壊と欧米の敗北 集英社 pp.77
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