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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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ミツバチにみられる個体差

 そう,答えはイエスだ。『ミツバチの知恵』の中のもっともチャーミングな実験で,シーリーは10匹のミツバチの尻振り傾向を観察した。まず最初に,給餌器で薄いショ糖を蜂に与えてから,シーリーは給餌器を濃いショ糖液の入ったものと交換した。蜂の反応には大きなばらつきがあった。ある蜂(BBと名づけられた)は,この10匹が行った尻振りダンスの総合計の41パーセントにもあたる回数のダンスを行ったが,もう1匹(OG)の回数は5パーセントにしかならなかった。この美食に慣れた辛口レストラン批評家OGは,まったくダンスをしないことさえあり,最高に濃いショ糖液に対してさえ,たった30回しか尻振り走行を行わなかった。30回とは,BBが低品質のショ糖液に対して尻振り走行を行った回数である(「お昼にビッグマックを食べたんだけど,最高においしかった!」)。そしてBBは,最高に濃いショ糖液に対しては完全に舞い上がり,100回以上も尻振り走行を行った。
 この遺伝的な個体差は,資源を効率的に活用しようとする巣の能力を損なう要因のように見えるかもしれないが,結果的にはおびただしい蜂の数によって均される。もちろん,BBは一握りの蜂をリクルートして,彼女が良いと思っている蜜源に連れて行くことになるかもしれないが,連れて行かれた蜂は失望して,その蜜源が結局たいしたものではなかったと報告するだろう。つまり,尻振りダンスは行わない。その頃までには,おそらくBBも巣に戻り,ビッグマック狩りに疲れて眠りに落ちていることだろう。過熱した興奮状態もおさまっているはずだ。
 実はコロニーには,BBのような蜂も必要だ。というのは,食料が少ないときには,ビッグマックだって大発見なのだから。そして,食料が潤沢に得られるときには,ほんとうに最高の場所に連れて行くためにリクルートを行うOGのような懐疑的な蜂も必要だ。大きな釣鐘曲線に示される蜂の興奮状態のばらつきがあるおかげで,コロニーは,常に変化する花蜜の供給状態に賢く対応することができる。


ローワン・ジェイコブセン 中里京子(訳) (2009). ハチはなぜ大量死したのか 文藝春秋 pp.62-63.
(Jacobsen, R. (2008). Fruitless Fall: The Collapse of the Honeybee and the Coming Agricultural Crisis. New York: Bloomsbury USA.)
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