蜂蜜は生産するのに費用がかかるが,コーンシロップは,まるでタダのように安い(栄養価も値段に比例する)。1970年代の蜂蜜生産業者は蜂蜜をコーンシロップでごまかすことによってぼろもうけした。450グラムあたりの蜂蜜の価格は56セントだったのに,コーンシロップはたった6セントだったのだから。けれども,これを見破る方法はすぐに開発されてしまった。そのあと粗悪蜂蜜製造者たちはもっと賢くなった。1998年,蜂蜜を大量に買い付ける北米の大手諸企業のもとに,あるインドの会社から,「蜂蜜類似物」をトン単位で提供するというファックスが届いた。コーンシロップあるいはライスシロップからなるこの類似物は「酵素的に加工」されているため,見た目も成分も蜂蜜に酷似しているという。このインドの会社は,この類似物が天然の蜂蜜をチェックするあらゆる検査にもパスすると保証し,本物の蜂蜜の代用品として使えると請けあった。このような「蜂蜜類似物」こそ,アメリカとカナダとヨーロッパの養蜂家たちが直面している問題なのだ。そして,私たちが食べているハニーローステッド・ピーナッツも,このインチキ蜂蜜を使っているのかもしれない。ある国際的な食品バイヤー用の手引きの新版には,8件の蜂蜜供給企業と14件の「蜂蜜代用品」の供給業者の名前がリストアップされている。
ローワン・ジェイコブセン 中里京子(訳) (2009). ハチはなぜ大量死したのか 文藝春秋 pp.160.
(Jacobsen, R. (2008). Fruitless Fall: The Collapse of the Honeybee and the Coming Agricultural Crisis. New York: Bloomsbury USA.)
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