繰り返すが,性格や人格,態度,さらには政治信条をも含め,人間の気質と行動パターンは,遺伝子の複雑な影響を反映しており,人の生涯を通して,遺伝子の発現は環境の多数の決定要因によって決まる。気質は遺伝子の影響と環境の影響が途方もなく複雑なかたちで相互作用して生み出される——ということであれば,今はもう,生まれか育ちかという疑問を乗り越えてしかるべき時なのだ。カリフォルニア大学バークリー校のダニエラ・コーファーとダーリーン・フランシスが2011年に結論したとおり,生まれと育ちの関係に関する最先端の研究成果は,「遺伝子と環境の関係についての暗黙の仮定を覆しつつある。……環境は,以前私たちが遺伝子にしか可能と思っていなかったほどの影響力を揮いうるし……ゲノムは,以前私たちが環境にしか可能と思っていなかったほどの順応性を持ちうる」。
ウォルター・ミシェル 柴田裕之(訳) (2015). マシュマロ・テスト:成功する子・しない子 早川書房 pp.106
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