計画立案,問題解決,柔軟な思考を可能にしてくれる実行機能は,言語を使った論理的思考や学業での成功に欠かせない。実行機能がよく発達している子どもは,目標を追求するときに,衝動的な反応を抑え込み,指示を念頭にとどめ,注意をコントロールできる。こういう子どもが,実行機能が未熟な同輩よりも,未就学段階で算数や言語,識字のテストで良い成績を収めるのは,驚くまでもない。
実行機能が発達するのに歩調を合わせるように,こうしたスキルを可能にする脳の領域(おもに前頭皮質にある)も発達する。マイケル・ポズナーとメアリー・ロスバートが2006年に示したように,実行機能にかかわる神経回路は,発育中の子どものホットシステムにおいて,ストレスや脅威への反応を調整する,より原始的な脳構造と密接に相互接続している。これらの緊密な神経の相互接続があるため,脅威やストレスに長期的にさらされると,しっかりした実行機能が発達する妨げとなる。ホットシステムが主導権を握ると,クールシステムに支障が出て,子どももうまく機能できない。だが逆に,実行機能が順調に発達すると,ネガティブな情動を調整したり,ストレスを和らげたりしやすくなる。
ウォルター・ミシェル 柴田裕之(訳) (2015). マシュマロ・テスト:成功する子・しない子 早川書房 pp.121-122
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