楽観とは,最良の結果を予測する傾向をいう。心理学者は,人が自分の将来に対して好都合な見通しを持つというふうに定義する。それは,本人が本当に起こると信じている(ただの希望というより確信に近い)見通しで,「できると思う!」というマインドセットと密接に結びついている。楽観のもたらすポジティブな結果は目も眩むほどすばらしく,研究による十分な裏づけがなければ,とうてい信じられないほどだ。たとえば,シェリー・テイラーとその共同研究者たちは,楽観主義者のほうがストレスに効果的に対処し,その不都合な影響を受けにくいことを示した。楽観主義者は,楽観の度合いが小さい人と比べると,自分の健康と将来の幸せを守るために多くの手を打ち,全般に,より健康な状態を保ち,鬱になりにくい。心理学者のチャールズ・カーヴァーとその共同研究者たちは,楽観主義者が冠状動脈バイパス手術を受けると,悲観主義者よりも早く回復することを突き止めた。楽観主義者の恩恵については,例を挙げればきりがない。ようするに楽観は,適度に現実に即しているかぎり,望んでしかるべき恵みなのだ。
ウォルター・ミシェル 柴田裕之(訳) (2015). マシュマロ・テスト:成功する子・しない子 早川書房 pp.131-132
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