1968年,私は包括的な見直しにかかった。ある状況での人々の振る舞い(たとえば会社での義務や責任の遂行に対する誠実さ)を,別の状況での振る舞い(たとえば家庭での誠実さ)と関連づけようとした何十という研究によって,それまでに示されていた相関関係が対象だ。その結果に,多くの心理学者がショックを受けた。概して相関の度合いはゼロではないものの,考えられていたよりもずっと小さかったのだ。さまざまな状況での振る舞いの一貫性を立証できなかった研究者たちは,自分たちが失敗したのは,不完全で信頼性に欠ける方法を使ったせいだとした。だが,人間の特徴が持つ性質と一貫性についての彼らの推定が間違っており,問題はそこにあるのではないかと私は思い始めた。
議論は続いたが,個人の行動の全般的一貫性は,一般にあまりに弱すぎて,ある種類の状況での振る舞いをもとにして,その人が別の種類の状況でどう振る舞うかを正確に予測する目的では役に立たないという事実に変わりはなかった。行動は状況次第で変わるのだ。高度に発達した自制のスキルも,ある状況である誘惑に対しては発揮されるだろうが,別の状況ではそうはいかない——転落した有名人が繰り返し私たちに思い出させてくれるように。
ウォルター・ミシェル 柴田裕之(訳) (2015). マシュマロ・テスト:成功する子・しない子 早川書房 pp.213-214
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