ある研究で,強いストレスに苦しんでいた大人たちが,「イフ・ゼン」の評価というやり方を使い,自分のストレスを引き起こすホットスポットを見つけるように指示された。細心に構成された日記をつけることで,彼らは自分にとって強いストレスを引き起こす特定の心理状況をずっと追跡記録し,それらのホットな誘引の1つひとつに対する自分の反応を毎日書き記した。たとえば「ジェニー」は,さまざまな状況で平均して普通のストレスレベルにあった——いや,平均よりやや低かった。ジェニーにとって問題となるストレスパターンは,彼女が仲間外れにされたと感じたときにだけ現れた。そういう状況のとき,彼女のストレスレベルは急上昇した。自分が仲間外れにされたと感じたとき,彼女は苦悩し,自分を責め,それ以上に他人を責め,人を避けるようになった。ストレスを経験する心理状況としない心理状況をジェニーが自分で発見する手助けをすること,そして,そうした状況での自分の反応を突き止める手助けをすることが,彼女がもっと柔軟にそのような状況に対処できるようにするための,的を絞った処置を考案する第一歩だった。この研究は「イフ・ゼン」のストレスパターンに焦点を当てたが,日記や追跡記録装置を使っての同じような自己観察は,何であれ,気になっている感情あるいは行動の結果として生じる過剰な反応のきっかけをマッピングするのに役立てることができる。自分が修正したいと思う行動を引き起こす「イフ」の刺激や状況を知ってしまえば,それらをどう評価し,それらにどう反応するかを変える位置に身を置ける。
ウォルター・ミシェル 柴田裕之(訳) (2015). マシュマロ・テスト:成功する子・しない子 早川書房 pp.227
PR