簡単な瞑想やマインドフルネスのエクササイズにも,実行機能をおおいに向上させる効果がある。「マインドフルネス・トレーニング」は,人が今この瞬間に注意を集中させるのを助け,沸き起こってくる感情や感覚や考えの1つひとつにたやすく気づき,偏った判断をせず,細かい説明は求めずに,体験することは何でも受け入れ,認めることを目指す。1日に約20分のトレーニングを5日間した若い成人のグループは,短い瞑想と組み合わせたこのエクササイズのおかげで,標準的なリラクゼーション・トレーニングに同じ時間をかけた対照群と比べてネガティブな感情が減り,疲れが和らぎ,ストレスへの心理的な反応や生理的な反応が軽減した。また,マインドフルネス・トレーニングをすると,雑念が減り,集中力が高まり,アメリカの多くの大学院が入学の条件として採用している大学院進学適性試験のような標準試験での学生の点数が上がった。
同様に,正常な成人の脳や老齢期の脳も,実行機能を高める比較的簡単な介入による恩恵にあずかれる。とりわけ注目すべきものが2つある。1つは身体的なエクササイズで,ほどほどの量や短時間の場合でも効果がある。もう1つは,孤独を最小限に抑えたり,社会的な支援をもたらしたり,他人との絆やつながりを強めたりする介入で,そういうものならば事実上何でも効果がある。
ウォルター・ミシェル 柴田裕之(訳) (2015). マシュマロ・テスト:成功する子・しない子 早川書房 pp.263-264
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