俗信の多くは,まったくの無意味というほかない。たとえば,有名な占星術師で本草学者のニコラス・カルペパー(1610〜1654)が書いた『医学訓令集 A Physicall Directory』から,次のような一節を見てみよう。
キノコは農耕の神サトゥルヌスの支配下にあり,たとえそれを食べて毒にあたった人がいたとしても,軍神マルスの薬草であるヨモギを食べれば,その人は癒やされる。なぜならマルスは,サトゥルヌスのすみかである山羊座で高位にあるからだ。それはサトゥルヌスの好意によってなされる。
ギリシアの食文化史研究家マリアナ・カブロウラキによると,古代ギリシアではキノコの毒に対する解毒剤の一覧表が使われていたという——たとえば「ラディッシュの果肉,キャベツの葉,温水にハチミツと硝石を混ぜた飲み物」。また,バルトメオ・スカッピは別の解毒法を提案している——「ニンニクをいくつか食べるとよい。ニンニクには解毒作用がある」。
シンシア・D・バーテルセン 関根光宏(訳) キノコの歴史 原書房 pp.83-84
PR