ロバート・アンダ,ヴィンセント・フェリッティらの研究チームは,家庭内暴力や虐待やネグレクトといった幼児期の悲惨な体験が成人後にもたらす影響について調査した。その結果,子供時代のそうした体験が,成人してからの病気や医療費の多さ,うつ病や自殺の増加,アルコールや麻薬の乱用,労働能力や社会的機能の貧しさ,能力的な障害,次世代の能力的欠陥などと相関関係があるとわかった。逆境的小児期体験(ACE)について調べたこの研究では,18歳までに虐待やネグレクト,家庭内でのアルコールや薬物の乱用などの体験があったかどうかを被験者に尋ね,1つの体験を1点と数えて合計点で深刻度を計測した。つまり,合計点が高いほど小児期の環境が悪いということだ。成人被験者の3人の2人が少なくとも1点,12.5パーセントは4点以上だった。小児期の逆境的経験がもたらす悪影響は著しい。
ジェームズ・J・ヘックマン 古草秀子(訳) (2015). 幼児教育の経済学 東洋経済新報社 pp.24-25
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