熱心な進歩主義者で1960年代から80年代にかけて社会政策評価に関してアメリカ有数の専門家だった社会学者のピーター・ロッシは,彼自身のキャリアの末期になって,評価論文に関する自身の幅広い知識を「鉄則」を使って要約した。ロッシの鉄則は,「大規模な社会計画について,その正味の価値を評価すれば,どんな計画であれ結果はゼロになる」というものだった。彼の厳然たる鉄則は,「社会計画の成果の評価がすばらしく設計されているほど,正味の成果はゼロだと評価される可能性が高い」とした。私に言わせれば,幼少期の介入に関する実施体験は,ロッシをそのような鉄則へと導いた,おなじみの落胆を誘うパターンを踏襲している。すなわち,こういうことだ。やる気に満ちた人々による,小規模の実験的努力は成果を示す。だが,それを綿密な設計によって大規模に再現しようとすると,有望に思えた効果が弱くなり,そのうちにすっかり消滅してしまうことが多い。
(by チャールズ・マレー『幼少期の教育的介入に否定的な報告もある』, pp.58-62.)
ジェームズ・J・ヘックマン 古草秀子(訳) (2015). 幼児教育の経済学 東洋経済新報社 pp.
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