性格検査も同様であって,私たちには夥しく多くの個人差や特性があるが,検査はひたすら,望ましい社会生活を営む上に,はっきりプラスになる性質とマイナスになる性質とが,その人の性格としてしらべられる。従順,無口,社交性,着実,粗野,人好きのよさ悪さ,等々がこれである。したがって毒にも薬にもならない性質は,たとえ個性的であっても取り上げられない。煙草を口の真中で吸うとか,上目がちに人の顔を見るとか,コーヒーに砂糖を入れないとか,そうした<つまらない>性質は性格特性に算えない。性格検査は社会生活を営む上に不適応を生じやすい性質,平均から偏った性質,社会的に望ましくない性質,またはおおいに歓迎され奨励される性質,の有無や度合を明らかにするためにある。テストは現在の世の中の基準で望ましいとする人間の選抜検査であり,優良品と劣等品,善玉と悪玉との,ふるいわけ検査である。更に,可能なかぎり早い時期に区分けして,それぞれに適した教育訓練を行ない社会的階層の適所に適材を配置するための検査なのである。
日本臨床心理学会(編) (1979). 心理テスト・その虚構と現実 現代書館 pp.145-146
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