投影法の存在が一般に広く知られ,実用化の試み,日本版の作成の試みなどがなされるようになったのは,昭和20年代後半から30年代前半にかけての時期であった。『ロールシャッハ研究』が初めて刊行されたのも,昭和33年(1958年)のことである。なかでも,1958年から59年にかけて刊行された『心理診断法双書』全3巻は,戦後の日本での投影法研究のその時点における集大成ともいうものであった。そのうちの1巻はTATにあてられ,木村駿氏によれば,
「1959年,戸川を中心としてTATの大冊が心理診断法のうちの1冊として公刊された。これはTAT概観,実施法と分析法,臨床的適用,実験的研究,類似法の各領域にわたり,わが国の主なTAT研究者たちの研究成果の集大成といえるもので,日本のTAT研究史上に一時期を画したものといえよう」
日本臨床心理学会(編) (1979). 心理テスト・その虚構と現実 現代書館 pp.351
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