では,因果関係を調べた研究の結論はどういうものでしょうか。
それらの研究の多くは,テレビやゲーム「そのもの」が子どもたちにもたらす負の因果効果は私たちが考えているほどには大きくないと結論づけています。それどころか,シカゴ大学のゲンコウ教授らは,幼少期にテレビを観ていた子どもたちは学力が高いと結論づけているほか,米国で行われた別の研究では,幼少期に「セサミストリート」などの教育番組を観て育った子どもたちは,就学後の学力が高かったことを示すものもあるのです。
ゲームについても同じです。ハーバード大学のクトナー教授らは,中学生を対象にした大規模な研究によって,ゲームが必ずしも有害ではないことを明らかにしています。それどころか,17歳以上の子どもが対象になるようなロールプレイングゲームなどの複雑なゲームは,子どものストレス発散につながり,創造性や忍耐力を培うのにむしろよい影響があるとさえ述べています。ゲームの中で暴力的な行為が行われていたとしても,それを学校や隣近所でやってやろうと考えるほど,子どもは愚かではないのです。
中室牧子 (2015). 「学力」の経済学 ディスカヴァー・トゥエンティワン pp.54-55
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