さらに,本来,手段にすぎないものが政策目的化しているという別の問題も存在します。
海外の政策評価においては,まず「学力の上昇」のように,教育政策の目的を明確にし,それを実現するためにどういった政策手段の費用対効果が高いのか,という検証を行います。一方,日本では,「2020年までにすべての小中学校の生徒1人に1台のタブレット端末を配布する」という政策目標が掲げられていることからも明らかなように,本来,政策目的ではなく「手段」であるはずのものが政策目的化してしまっています。重要なのは「タブレットを配布すること」ではなく,「何のために配布するのか」でしょう。この状況は効率的な資源配分を歪めている可能性があります。タブレットよりも,他のことに予算を使ったほうが子どもの学力や意欲の向上がみられるということも,十分にあり得るからです。
中室牧子 (2015). 「学力」の経済学 ディスカヴァー・トゥエンティワン pp.116
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