まず,正しく因果関係を証明するためには,データを収集する段階から,因果関係を証明することを念頭に置いたデザインにしなければならないのですが,日本の統計にはそもそもその認識が欠如しているものが多いという問題があります。
さらに,研究者が利用できるデータが限られている,という別の問題も存在します。たとえば,全国学力・学習状況調査は,文部科学省やその関連機関に所属する研究者など,限られた人以外はアクセスできません。
なぜなら,全国学力・学習状況調査は統計法で定められた「統計」ではないからです。「統計」であれば,研究者はアクセス可能なのですが,実際は「意見・意識など,事実に該当しない項目を調査する世論調査など」(総務省のウェブサイトより)という扱いになっており,研究者はこのデータを学術研究に用いることができないのです。
中室牧子 (2015). 「学力」の経済学 ディスカヴァー・トゥエンティワン pp.137
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