「ベストを尽くせ」よりはるかに有効なのが,「具体的で難易度が高い目標」の設定です。組織心理学者のエドウィン・ロックとゲイリー・レイサムが,このタイプの目標の驚くべき効果を明らかにしています。2人は,「具体的で難易度が高い目標」が,「曖昧で難易度が低い目標」に比べ,はるかに高いパフォーマンスを生み出すことを発見しました。これは「自分で設定した目標」「他者が設定した目標」「他者と共に設定した目標」のすべてに当てはまります。
このタイプの目標は,なぜ動機づけを高めるのでしょうか。「具体的」についての説明は簡単です。何が求められているかを正確に知ることで,適当な仕事でお茶を濁したり,自分自身に「これくらいで十分だ」と言い訳をしたりすることができなくなります。
目標がはっきりしていなければ,低きに流れるのは簡単です。疲れている,気分が乗らない,退屈だ——そんな理由で,簡単に誘惑に負けてしまいます。
しかし,はっきりとした目標があればごまかしは利きません。達成できるかできないか——白か黒のどちらかしかないのです。
「難易度が高い」についてはどうでしょうか。ハードルを上げれば,自ら災難を招いてしまうことにはならないのでしょうか。嬉しいことに,そうはなりません。もちろん,あまりにも難易度の高い非現実的な目標は設定すべきではありません。キーワードは,「難しいが可能」,です。難易度の高い目標は,自然と意欲や集中力を高めてくれます。粘り強く目標に取り組み,自ずと最適な方法を選ぶようにもなります。
ハイディ・グラント・ハルバーソン 児島 修(訳) (2013). やってのける:意志力を使わずに自分を動かす 大和書房 pp.32-33
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