遺伝子型は,重要な概念である。個体のすべての生物学的特性は,究極的には,その個体のもつ遺伝子型の影響を大きく受けるからである。ある遺伝子型のなかの特定の遺伝子やその組合せの発現によって生じる観察可能な特性が,その個体の表現型の全体を作り上げる。いくつかの表現型の特性は,遺伝子型によって----単一の遺伝子のみによって,あるいはほかの遺伝子と一緒になって----直接決定される。しかし,ほかの表現型(行動はその最たるものだ)は,究極的には,遺伝子と環境の相互作用の結果として生じる。遺伝子と行動に関するデータをあつかう場合には----データが間接的なものにならざるをえない人間の場合にはとりわけ----つねにこのことを念頭においておく必要がある。
ウィリアム・R・クラーク&マイケル・グルンスタイン 鈴木光太郎(訳) 遺伝子は私たちをどこまで支配しているか DNAから心の謎を解く 新曜社 pp.39-40
(Clark, W. R. & Grunstein, M. (2000). Are We Hardwired?: The Role of Genes in Human Behavior. New York: Oxford University Press.)
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