単に児童・生徒が楽しんで活動するだけの体験・実技系授業は数多い。担当教員はよかれと思って作り込み,何ら反省することもなく,また新たな活動を考える。生徒にとっては楽しい時間だから,その教員の人気は高まる。
そういう状況を目の当たりにしたとき,教育の本質的な意味をわかっている教師は,苦々しい思いを押し殺しながら,「人気取りの授業をしていてはダメだ」と指摘する。すると,活動主義の教員は,自分が一生懸命作り上げた授業,ひいては自分の情熱を否定されたとして指摘した教師との間に溝を作る。このまま数年を経ると,意固地で変化できない教員が完成する。
何のための体験・活動なのかを精査し,活動が終わった後に振り返りを行い,次の段階や別の分野に応用していくことを考えなければ,教育機関の使命を果たしたとは言えまい。毎回の体験・活動の効果を最大化し,生徒に有意義な時間を過ごさせることが求められるのだ。
林 純次 (2015). 残念な教員:学校教育の失敗学 光文社 pp.231-232
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