では,管理者教育が企業パフォーマンスに与える影響を知りたいとしよう。どれだけ管理者教育に力を入れているかをハロー効果を避けて測定するには,教育のための総費用,管理者1人あたりの教育日数,受けられる教育の種類など,客観的な材料を用いなければならない。そのようにして,管理者教育に経費や時間をかける企業ほど業績がよいことが確認できたとする。この結果はどう解釈できるだろうか。管理者教育に力を入れれば業績が上がると考えていいだろうか。それはできない。儲かっている企業なら,教育にかけられる資金も他社より多いかもしれないからである。1時点でのデータ——横断的データ——を見ているかぎり,正しい答えを導くことはできない。心理学者のエドウィン・ロックはこの点を重視し,「相関性は因果関係の仮説を立てるには使えるだろうが,科学的な証明はできない。相関性そのものからは何もわからないのである」と述べている。
フィル・ローゼンツワイグ 桃井緑美子(訳) (2008). なぜビジネス書は間違うのか:ハロー効果という妄想 日経BP社 pp.123
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